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【 ≪ミタライ・カフェ≫と併せてお読み下さい 】


‖ 上記注意書きに危険を感じられた方はこちらからお戻り下さい ‖


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愛情系 007-1 / TYPE-C

ミタライ・カフェ、舞台裏事情
ミタライ・カフェ、ぶたいうらじじょう





                 いしおかくん
 「……全くもう、何考えてるんだよ石岡君、冗談じゃないよー……」

 「――うん? どうしたんだいキヨシ、君が愚痴とは珍しい。それは日本の読物だろう?
 
なに 
 何か不機嫌になるようなことでも書いてあったのかい?」

 「不機嫌!? 不機嫌だって!? そんな半端な言葉で今の僕の想いが語り尽くせるもんか!

 この世の終わりだよ!!」

 「あぁ、解った解った。…で、何なんだい? 一体何があったんだ?」

 「――彼が浮気してる」

 「……何だって?」

 「石岡君が女といちゃ付いてるんだー、僕がいないのをいいことに!」

 「あぁ、それはミスター石岡の本なのか。しかし浮気って……別に君達は恋人同士だった

 わけではないんだろう?」

 「恋人だよ! 彼は僕の気持ちをまだ知らないが僕の中では二人は恋人同士だった!」

 「それは単なる片想いじゃないかい、キヨシ」

 「うるさい! 大体日本人男性が友人に囁かれたり抱き付かれたりしている時点で不思議

 に思わない彼の方がどうかしてるんだよ! 彼は莫迦だ! 鈍感キングだ!」

 「そんなことを私に言われても。と言うか、彼が一体何をしたって言うんだ?」

 「――…言いたくない」

 「……結婚とか?」

 「うわっ、何て恐ろしいことを想像させるんだ! 燃やすぞこの野郎」

 「――…じゃあ一体何なんだ……」

 「キスだよ!」

 「……何だって?」
                         
  いぬぼうさとみ
 「キスされてたんだー! しかもディープ・キス!! あの犬坊里美とか何とかいう小娘に
                                       
りゅう
 …――ああー、って言うか石岡君どうして逃げようとしないのかなー!? 男だろ!? 『龍
 
がてい
 臥亭』の時といいどうして毎回毎回女に無理矢理やられるんだー! ぼけっとしてるにも

 程がある!!」

 「…キス?」

 「復唱すんな! 忘れようとしてんのに!」
        
 きみ
 「――…キヨシ、君……外国育ちなんだろう? 何もキスぐらいでそこまで取り乱さなく

 ても……」

 「キスぐらいだって!? ――十四年!! 十四年だぞ!? 十四年間も一緒に暮らしていて!!

 その“キスぐらい”が僕には出来なかった!!」

 「友人なんだから当然だろう。……あぁ、したかったんだ……?」

 「あぁしたかったさ! それだけじゃない、赦されるのならばやりたいことはいっぱいあ

 った! 頭の中でだけは散々やったけどね!」

 「彼はゲイじゃないんだから仕方がないだろう」

 「彼はって言うな! 僕だってそうだ!」

 「でもミスター石岡が好きなんだろう?」

 「君は彼を見たことがないからそう言うんだー!!」

 「……レオナはどうしてこんな男が好きなんだ……?」

 「僕から見たら君や石岡君がレオナにぽーっとなってることの方が世界七大不思議だよ。

 ――ああっ、そうだ、いいこと思い付いた!」

 「……何?」

 「あぁ、相変わらず僕って天才だな! ハインリッヒ、君って確か記者だったよね?」

 「あ、あぁ……(何だか厭な予感がするが……)」

 「ってことは文章書くの得意だよね? 出版関係者にも知り合い多いよね? ――友達、

 だよね?」

 「……あぁ、まぁ……そうだけど……」

 「――書いて」

 「なっ、何を……?」
          みたらいきよし
 「僕の今の生活。“
御手洗潔、最新報告!”とか派手に銘打って日本の読者向けに短篇書

 いて?」

 「君って奴は……」

 「“目には目を”だよ、向こうが先にやったことじゃないか。さ〜て、どうしてやろっか

 な〜♪」

 「キヨシ……」

 「“
日本の読者のみなさん、元気でお過ごしのことと思います。ハインリッヒ・フォン・

 レーンドルフ・シュタインオルトです。
”――」
     
 なん
 「うわっ、何かもう既にパソコンまでスタンバイしてるし!!」

 「……“
たくさんのお便りを、ありがとうございました。”……」

 「やめてくれキヨシ! 確かに私は最近日本の読者から手紙を沢山貰ったがそのほとんど

 は“アンタ何呑気にキヨシと遊んでんのよ、早く彼を横浜に帰しなさいよ!”という脅迫
                   
 なに
 紛いのものばかりだったんだ! これ以上何かすると私の平穏な生活が……」

 「“
私のオフィスのデスクには、日本のみなさんからの手紙で山ができています。”――

 …ハインリッヒ?」

 「えっ、何?」

 「どうして君宛に日本の愛好家達から手紙が来るようになったのかその理由を憶えている

 かい?」

 「えっ、…えぇ〜っと、それは……」

 「センチになったキヨシがラーセンで何を語ったって? 誰が清潔な顔と薄い胸と哀願す

 るような目付きにノックアウトを喰らわされたって?」

 「…………」

 「――誰かさんのお陰で僕はますます日本に帰り辛くなってしまった! 全く、どうして

 僕の周りにいる人間は揃いも揃って異様に口が軽いのかなぁ!?」

 「あぁ〜、解った! 解ったキヨシ、私が悪かった! 書くよ、書きます、どうすればい

 いんだ!?」

 「いや、やっぱり君は書かなくていい、僕が書こう。君に任せるとまた下らねぇ思い出話
     
 けむ
 でテーマが煙に巻かれるし、たまには僕自身やってみたいと思っていたことだしね。だか

 らハインリッヒ、名前だけ貸して☆」
    
 なん
 「わあ、何か目茶苦茶可愛らしく語尾上がりに言ってるけどその表情は何物にも例え難い

 程に邪悪だ! それに何だかそういうやり方が一番怖いよ。…キヨシ、出来たら私はもう

 日本のお嬢さん方に怨まれるような真似はしたくないんだ、ここは一つ彼女達の怒りを鎮

 める方向でだね……」

 「“
私と彼とのつき合いも、思えばもうずんぶんと長くなり、彼の日本の友人、石岡氏の

 それにも負けないほどのものになってきました。
”――」

 「…って人の話聞いてるか!? 波風立てたくないって言ってるだろ!?」
                      
 あせ
 「でも僕は立てたいんだ。…はっはー、石岡君の焦る様子が目に浮かぶ……」

 「大体君達は十五年近くもの間行動を共にしていたはずだろう!? 二〇〇二年の現時点で

 君と私の付き合いといえばせいぜい五年か六年じゃないか!」

 「ああん、そんなの! 心配しなくても君は日本読者の間ではちょっぴり厚顔無恥な人物
   
 とお                   なん
 として通ってる。多少計算が大味でも“あー、また何か調子に乗った勘違いしてるよこの

 人”ぐらいにしか思われないさ!」

 「ぐらいって……!」

 「あぁーもう解った解った。それじゃあちょっとだけ彼女達の怒りが分散するように他の

 奴の名前も出しといてやるから(別に友達じゃないけど)。えっと……あれ? こういう

 場合はマッファーレンなのかマクファーレンなのか……外国人の名前を片仮名にするのっ

 て意外と難しいな! まぁいいや、適当で!」

 「適当!?」

 「あぁ、でもいきなりお友達自慢ってのも何だな。いくらハインリッヒでもなぁ! 少し

 は自重しないと。…えーと、じゃあ初めはこういっとくか。“
順を追って話すとしましょ

 う。
”、えー“わが友人キヨシは、”〜……♪♪♪」

 「…………(恐ろしい程のハイ・スピードでキーボードを叩くキヨシにちょっぴり不安な

 リッヒ)」

 「“
この武器は、脳内のさまざまな応用戦略を可能にするようです。”――さて! “

 手洗氏はストックホルムでの暮らしがたいそう気にいっていて、常々動きたくないと語っ

 ていました。
”」

 「…………!」

 「“
それはたぶん私とのつき合いなども含んで、そう言ってくれていたと信じるのですが、

 そんなことで彼は、ウプサラ大からの誘いを先延ばしにしていたのです。
”」

 「えっ、そうだったのかい?」

 「ううん? 本当は色々な手続きが面倒臭かっただけ」

 「…………」

 「“
当初私は、友人を追いかけてウプサラに移るつもりなどはまったくなく、週に一度、

 車か列車で友人の顔を見に通ってきていたのですが、何度か訪れるうちに、この古い街の

 美しさにすっかり魅せられるようになり、友人も勧めるので、フリション川のほとりにア

 パートを借りて引っ越しました。

  私の仕事などPCさえあればどこででもできる種類のものだし、ストックホルムの出版

 社とも長いつきあいになったことだから、顔を見せる頻度が多少減ったくらいで、即刻他

 のライターに切り替えることもあるまいと考えました。また出版社ならほかにいくらもあ

 りますが、御手洗教授のような友人、とくに彼が提供してくれるあのぞくぞくした刺激は、

 ほかの人物では到底替わりようもないので、一人になってみたら、私は彼が周囲にばらま

 いていたあの数々の刺激の、重度の中毒者になっていたことを発見したのです。
”っと…

 …」

 「うわーちょっと待ってくれキヨシ! 今のはかなりまずいよ!! それじゃ何だか私がミ

 スター石岡に目茶苦茶悪意のある厭味を言っていることになるじゃないか!!」

 「あぁ〜まぁそういうことになるねぇ〜、って言うか僕から見ても厭味以外の何物でもな

 いと思うけどねぇ」

 「思うけどねぇってそれは私の名前で世に出すつもりの文章なんだろう!? それだけは絶

 対にやめてくれ、もう外を出歩けなくなる、彼のファンに殺される!!」

 「殺されないよ。というよりもしこの僕と君の関係を不誠実だと意見する奴がいるならそ

 れこそお互い様だろうと逆に石岡君を責めてやる。そもそも向こうが先にやったことだろ

 う? 岡山娘を横浜へ歓迎したのも二人で遊び廻るようになったのも」

 「あ? あぁ……言われてみれば……そうだけど……」

 「大体世間は何やら大変な勘違いをしているようだがどんなに稀に見る天才だろうとどん
                      
 かよ
 なにクールなハンサムだろうと僕だって赤い血の通った人間なんだ。これでも人並みには、
                                      
 まみ
 …いや、もしかしたらそれ以上に様々な感情に苦しめられ、傷付けられてきた。泥に塗れ
              
 よしきたけし
 て陰で涙を流しているのは何も吉敷竹史だけじゃない、僕だって辛いんだよ……」

 「キヨシ……(前半は敢えて突っ込まない上ヨシキタケシって誰なのか知らないけど君が
  
 まみ
 泥に塗れているのはほとんどが自分の勝手じゃないか……傷付いているのは解るけど何だ

 か素直に同情出来ないよ……)」

 「僕はハインリッヒとキスなんかしないのに石岡君はあんな小娘に舌まで挿れさせて、…

 ――うっ、ううう……“
ウプサラ駅にはじめて降りたったあの十一月の朝は、”〜…… 

 (涙声)」

 「(あぁ、でもやってる厭がらせはやめないんだな……)」

 「“
私は何故自分がこんなに鴨たちに歓迎されるのかが解りませんでしたが、そばに来た

 婦人がパンくずをまきはじめたので事情が解りました。鴨たちは、私もパンをくれると思

 ったのです。
”――…あああぁ〜、そういえば鳩に餌をやっていた石岡君(当時三十八歳)

 は目茶苦茶可愛かったなぁ! 別に大した意味はなく趣味でこっそりウォッチングしよう

 と思い言い付けた用事だったけど彼は律儀に守ってくれて、あの時の彼はまるで天使のよ

 うだったよ! …それに比べてこのハインリッヒのケチなことといったらもう…――やれ

 よ! 鴨に餌ぐらいさぁ!」

 「それは勝手な想像だろうが! 訳の解らない難癖を付けて怒るな!」

 「…ああっ、何コイツ今もしかして僕に向かって怒鳴った!? ちくしょう、石岡君の真似

 して僕の気を引こうったってそうはいかないぞ。あれは彼だったからこそ可愛くも見えた
                 
いのちし   はなは
 んだ、この僕に意見しようだなんて生命知らずも甚だしい。――って言うか、事故に見せ
                
めまい    のべおさむ
 かけて殺すよ?(失敗したけど『眩暈』事件の野辺修みたいに)」

 「別に君のことを狙ってなんかいないよ! …あぁ、解ったよキヨシ、私が悪かった。も

 う怒鳴ったりしないから……」

 「でもまだ僕はちょっぴりムカついてるんだ☆ ってコトでハインリッヒ、ハグ決定」

 「なっ…!」

 「“
時間を言ってくれたら駅まで迎えにいくとキヨシは言ってくれたのですが、私がウプ

 サラの街を一人で存分に歩き廻りたかったので、この誘いは断り、このカフェで会うこと

 にしたのです。
”――フフフ、解るかいハインリッヒ、この短い文章の中に込められた大

 いなる意味が。日本の愛好家の間ではね、僕が友人を駅まで出迎えるなんて物凄く珍しい
         
 
 ことだという認識が為されているんだよ、何故か。まぁ実際はそんなことぐらい当たり前

 のようにやるんだが、石岡君にはあまりそうした優しさや気遣いを見せないところが事実

 あったんで、彼の本の読者には時間も礼儀も守らない男だというイメージが定着しちゃっ

 てるんだよね――実は彼との約束の時刻に遅れまくっていたのは“僕を待つ彼”を物陰か

 らこっそり眺めていたからなんだが。

  ――さて。ここで質問なんだがこんな僕に“駅まで迎えに行ってあげようか?”という

 科白を吐かせそれを“一人で存分に”“ウプサラの街を見て廻りたい”などという理由で

 断わった君は石岡君やレオナや日本の愛好家達にどう思われるだろうねハインリッヒ?」

 「い、厭味なオッサン、かな……」

 「それどころか嫉妬と憎悪の対象だ」

 「――デリートしてくれ!!」

 「あっははははは! “
店に入ってきたキヨシは相変わらず陽気で、ずいぶん遠くから、

 「ハイ、ハインリッヒ、生きていたかい?!」と言って両手を広げ、私も「ヘイ、キヨシ!」

 と叫んで、ハグをかわすことになりました。
”」

 「だからデリートしてくれって! って言うか何だよ“
すいぶん”って!」

 「あ? …ああ、これはちょっとしたミス・タッチだ。――ま、いっか、このままにして

 おこう。君が莫迦だと思われるだけだし」

 「…しゃ、写植の人が気付いてくれればいいけど……(何やら消極的)」

 「あぁー、でもあんまり距離を感じさせ過ぎるのもまずいからな! 日本時代とそうは変

 わらないキヨシもアピールしておかなければ。ってことで、“
世界中に、自分の生き方を

 変えるものなどないのだと言いたげでした。
”“この中は完全禁煙だよと教授は言い、今

 時表にいるのは煙を喫いたい野蛮人だけさ、と言っていました。
”っと……」

 「けっ、計算人生……!」
                                  
 
 「そして〜、またごにゃごにゃと研究施設の話を挟んでちょっぴり緊張感を解いたところ

 へ、衝撃の告白! “
今夜のディナーはそこにしようぜ、そして今夜はぼくのアパートに

 泊まっていったらいいと言ってくれました。
”! ――さ〜ぁハインリッヒを僕のアパー
               
かずみ
 トに泊めちまったぞ、どうする和己ー!?」
               
かお
 「あぁ、何て意地悪嬉しそうな表情をするんだろう、こんな男だとは思わなかった…! 
    
みんな
 大学では皆に慕われている爽やかな教授にしか見えないのに……!」

 「おおっとそうだった、忘れるところだった、ありがとうハインリッヒ! 僕が外国で如

 何に有能で人気者なのかもきちんと書いておかなくっちゃネ☆ ええと、“
キヨシ教授は、

 同僚にも職員にも人気があるようでしたが、とりわけ学生たちに人気が高く、彼を見かけ

 るとみんなが手を上げ、笑みをかけてきます。
”……」
        
みんな
 「今の君を見たら皆態度を変えると思うが……」

 「あぁ……それからこいつはちょっと賭けだが、いい機会だから書いておこう。そう、あ

 の“ミタライ・カフェ”のことを……」

 「――…キヨシ?」

 「ハインリッヒ……ここからは少し真面目な話だ、そのつもりで聞いてくれ。

  僕は日本ではあまり自分が解決した事件を人に語るようなことをしなかった。確かに僕

 はちょっぴり自信家なところがあるし非常に調子にも乗り易い性格だが仮にも“根は紳士

 的で気高い”のだというパーソナリティーを与えられた主人公だ、被害者のことを考える

 ととてもじゃないが殺人事件を茶呑み話になんて出来ない。いや、寧ろ――そうしたこと

 をする人物を軽蔑していたと言っていいだろう。なのに――

  そう、僕は嘘でも何でもなくこのフィカを、つまり実在事件の思い出話を周囲に乞われ

 てやっているね。…はは、御手洗潔も堕ちたもんだよ、昔の僕を知る者が見れば間違いな

 くそう言うだろう。でも……

  僕は独りだ。そりゃ確かに君を含めて僕には友人が沢山いるが、それでもやっぱり僕は

 独りぼっちのままなんだ。…だってそうだろう? 本当に大切な人は今ここにいないんだ

 から、心から求める耀きは遠い海の向こうなんだから。こんな僕にでもやっぱり寂しい時

 はある、真実の愛を、哀しみを知った今だからこそもう独りには耐えられない。だったら

 ――…仲間を作るしかないだろう、集めるしかないだろう? 自分のプライドを捨てても、

 見苦しいと解っていても誰かに傍にいて欲しい……人間だったら、そう思ってしまうのは

 至極当然のことじゃないか?

  …きっとこのフィカの存在を知れば石岡君は驚くだろう、らしくないと哀しむだろう。

 だがもしかしたら気付いてくれるかも知れない、今の僕の心寒さに。そんな願いをこめて

 今僕はこの告白をするつもりだ(君の名前でだが)。そしていつかは気付いてくれる日が

 来ることを信じ、僕はこの短篇に名付けよう。そう、『
ミタライ・カフェ』と……!」

 「…キヨシ……一見演説風な愚痴はいいがまた画面上にミス・タッチがあるよ。“
彼な

 は“彼は”と打ちたかったのか? そしてこの“
ウブサラ”というのは“ウプサラ”の間

 違いか?」

 「うわっ、何だこの野郎、人の真剣な打ち明け話を適当に聞き流しやがって、その挙句が

 人の粗捜しか! ちくしょう、どうせこれは君の書いた文章なんだ、このまま出版社に送

 ってやる!」

 「いいよもう、好きにすれば。どうせこんな内容で本なんか出版されるとも思えないし」

 「ふふん、そうやって呑気に構えているがいいさ、内容がどうであれ僕の出番がどうであ

 れ“御手洗潔”の名があればファンは立ち止まってしまうんだ。知人の大作家にも協力し

 て貰うつもりだからこの本は間違いなく出版されるよ。――“
二〇〇二年一月十八日、ウ

 プサラにて。ハインリッヒ・フォン・レーンドルフ・シュタインオルト
”と……(おっ、

 今日は吉敷竹史の誕生日じゃないか。あーあ、一人だけさっさと幸せになりやがって羨ま

 しいなぁ、ちくしょう)」

 「……はぁ〜……(どうしたもんかなぁ、この男は……)」





    
**********




          
 
  それから凡そ二ヵ月後――横浜馬車道にて。


                  
  メッチャ
 「うっわ何だよこれ、何が最新報告だ、目茶苦茶ムカつく! って言うか何なんだよこの
                                    
 
 ハインリッヒとかいう人、御手洗のどこ見てこんなに褒めてんだ、目ェちゃんと開いてる

 か!? 大体何だよ御手洗も! 妙に親切ぶっちゃってアパートに泊めたりハグしたり! 

 相変わらず自己顕示欲は強いし自慢話に花咲かせてるし……どうせ僕の失敗なんかも大袈

 裟に笑い飛ばしてるんだろう! ふん、何が“
彼の提供してくれるあのぞくぞくした刺激

 は、ほかの人物では到底替わりようもないので
”だ! ぞくぞくした刺激って何だよ!? 

 また一部の同人女を勘繰らすような微妙な表現選びやがって! 何だよ“
すいぶん”って

 !? “ずいぶん”って書きたかったのか、“ずいぶん”の間違いか!? “
ウブサラ”って

 どこにあんだよ、莫迦じゃねーの!? 

  くっそ〜、御手洗の奴、人の気も知らずにヘラヘラしやがって〜! ――いいさ、そっ
                                   
 なん
 ちが楽しくやってるんならこっちにだって考えがある! 里美ちゃんや誰かと何かしてる

 とこばかり描写してやるーッ!!」



  ――なーんて。全然、伝わってません。

  どっちもどっち☆











どんな話も解釈次第!
…いや、これはまぁ極端な例(妄想)ですけど(苦笑)。
それにしてもどうして石岡君がしていることと同じことを御手洗さんがすると
非人間みたいに言われちゃうんでしょうねぇ。
……可哀相なキヨシ……(笑)。



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