ET CETERA 002-5 / TYPE-S

秋の午睡 ―SIDE・M−
あきのごすい ―サイド・エム―






     うたたね
 ソファで転寝をしている 彼を見つけた

 無防備な寝顔 唇を薄く開いて

 白い喉を天へと曝して


       
 
 今ここで 彼に触れれば 抱き締めれば

 あの狂おしいまでの 淫らな時間は

 容易く 手に入るだろう

 初めは戸惑ってみせても どうせ彼は すぐこの熱を受け入れる

 欲しいものが手に入る

 分かってはいるのだけれど



 ふとあの頃のことを 思い出す

 この寝姿に躊躇った 切なくも長い日々

 いつを始まりにしようか いつ始まりがあるのかと

 ただただその場に立ち尽くし

 彼に焦がれ続けた 甘い時間



 だから今日は何もせず

 黙って彼を見つめていよう
        
 いと
 このもどかしさが愛しさが この手で花色に染まる時

 より幸せを感じる為に



 彼をまた更に激しく深く 愛する為に――












*** 石岡和己ヴァージョンはこちら ***



≪御手洗潔&石岡和己記念日作品≫トップへ