友情系 001-2 / TYPE-S

十二番目の貴石、その後。
じゅうにばんめのきせき、そのご。





   みたらい  いしおかくん 
  御手洗: 石岡君、君って莫迦だよね。

  石岡 : はあ!?



       
キッチンのテーブルで向かい合い紅茶を呑んでいる二人。

       
長い足を組みぼんやりと寛いでいた御手洗が、思い出したように石岡に呟く。



  御手洗: …ちょっと君、そんなにテーブルを揺らさないでくれたまえよ。せっかくの

       紅茶が零れてしまう。

  石岡 : 君が突然訳解んないこと言うからだろ! ――…で? 何なんだよ、一体。
             
はなし
       今僕達はそんな話してなかったじゃないか。
              
 なん はなし
  御手洗: あん? …あぁ、何の話してたんだっけ。

  石岡 : またそうやってすぐにはぐらかそうとする! 忘れた振りしたって何度でも

       思い出させてやるからな。あのミステリーツアーの時に持っていったって言

       う君の宝! あれ何だったんだって訊いてたんだよ。なのに突然――何だよ、

       全然関係ないこと言い出して。

  御手洗: いや、ふっと思い出したもんだから。


  石岡 : 僕が莫迦だってことをか!?

  御手洗: そう、君が莫迦だってことを。

  石岡 : うっ、…う〜ん、そりゃあまあ、ね……君から見ればそうなのかも知れない

       けど……

  御手洗: だろ?

                                   こと
  石岡 : でも! 普通本人を目の前にして言わないだろう、そういう科白は。失礼な

       奴だなぁ。

  御手洗: おや、未だに君が僕にそんなものを求めているとは思ってもみなかったよ。

       君は本が書ける程に僕の本質を知り尽くしているはずなのに!


  石岡 : 知り尽くしちゃいないよ。君みたいな変な男、きっと一生かかったって理解

       は出来ない。

  御手洗: ――そりゃお互い様だよ。

  石岡 : 何だって?

  御手洗: 何でもない。

  石岡 : それはともかくとしてだね、御手洗君。――…ん、あれ、ちょっと待てよ?
      
 なん はなし
       何の話してたんだっけ。

  御手洗: うん? あぁ…――別に。下らない世間話だよ。まぁ紅茶でも呑んで落ち着

       いたらどうだい?

  石岡 : うん……。

  御手洗: ――――…くっ、……

  石岡 : ――ん? 何だよ御手洗、何笑ってるんだ?

  御手洗: いや、何でも――ちょっと急に思い出したもんでね。

  石岡 : 何を?

  御手洗: 僕が莫迦だってことをさ。

  石岡 : ??? ――…変な奴……。



       
御手洗はテーブルに頬杖を突くと小首を傾げる石岡を見つめ、自嘲するよう

       に溜め息を洩らす。




  御手洗: …あぁ、本っ当に――…僕って、莫迦だよね。








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