|
---|
御手洗「大きく間違ってはいないけど……“無神経、独裁的、詐欺師”とはこれまた随 分な言い様だね」 石岡 「えー? これでも精一杯褒めたつもりだよ? 髪の描写だっていつになく上品 に留めてあるし」 御手洗「しかも石岡君……この“美男が好き”っていうのは何なんだい?」 石岡 「ああ、それは……別に深い意味はなかったんだけど。だって君、儚気な美青年 や美少年にはいつも特別に優しい面を見せてるような気がするからさー」 御手洗「……僕の同性愛嗜好が広まったのは明らかに君の責任だな……」 石岡 「そんなに気にしなくても誰も本気で疑っちゃいないよー。それにほら! 外見 についてなんて“悪い要素はない”とまで書いてある、本当はあまり僕の好み じゃないのに」 御手洗「ああ本当だね、褒められているのか何なのかよく解らないが」 石岡 「ところで御手洗君、≪本格ミステリー宣言≫には“午前08時28分横浜生まれ” って書いてあるけど君の出身地本当はアメリカなの? 日本なの?」 御手洗「さあねぇ。…ま、いいんじゃないの、少しぐらいは解らないことがあっても」 石岡 「うぅ〜ん、じゃあ次は僕の方か。あぁ、こういうのって何か……見るのが怖い なぁ」 御手洗「いつも本には色んな人のこと無茶苦茶書いてるくせに、よく言うよ」 |
|
---|
石岡 「――…御手洗っ!」 御手洗「ああん?」 石岡 「ああん? じゃないよ、何だよこれは! 僕がとんでもない女好きみたいに見 えるじゃないか、何とかしろよ!」 御手洗「何ともならないよ、人に言われて困るのならアイドル歌手のテレホンカードを 収集するのはもうやめたまえ」 石岡 「言うなってば! 大体“変わり者”って何だよ、こんな常識人を捕まえて!」 御手洗「自分だって書いてるじゃないか」 石岡 「そんな君に書かれたことがショックなんだよ!」 御手洗「何だい、人のことは狂人だの気違いだの平気で言うくせに。…僕だって精一杯 褒めたつもりなんだぜ? “陰気、卑屈、脆弱”じゃまずいと思って“内気、 謙虚、繊細”に言葉を置き換えたし、“知性の退化”についても特別何も触れ ちゃいない」 石岡 「う〜ん……まぁ確かにこれはこれで間違ったところはないんだけど……」 レオナ「――あら! ちょっと待って御手洗さん、石岡さんの方のリストはこれで完成 しているとは言えないわ」 石岡 「ああ、びっくりした、レオナさん!? ――……ええ〜と、こんにちは。お茶は アップルティーでも構いませんか?」 レオナ「ええ、ありがとう、でもどうぞお気遣いなく。(ティーカップを傾けながら)… ――ああ、石岡さんは相変わらず紅茶を淹れるのが上手だわ。誰かさんは幸せ 者ね?」 御手洗「――君みたいな忙しい人がわざわざお茶を呑みに来たのかい?」 レオナ「近くまで来たからついでに少し寄らせていただいただけよ。それにしてもこの リストは不親切だわ、だってこれじゃあ石岡さんがどういう風貌の男性なのか 全然解らないもの」 石岡 「いや、それは別に……書かなくてもいいんじゃないですか? 僕は別にこれと 言った特徴もないつまらない男ですし……」 レオナ「いいえ駄目よ、このままではカズミストのお嬢さん方に失礼だわ。…そうね、 じゃあ私が人から聞いた印象を書き足しておこうかしら? ええと……“風に 靡く少し長めの直毛に色白で華奢”、それから――… “とても清潔な顔をしていて、白いワイシャツをよく着ていて、胸が薄くて、 哀願するような目付きの、日本型のやわらかな風貌の美形”――」 御手洗「…――――」 石岡 「あの、レオナさん……それって何だか脚色されていませんか? この紹介文を 信用した人が実物を見たらがっかりするかも知れないし……――って言うか、 それ本当に僕を見たことがある人の証言なのかなぁ? ……大体男なのに特徴 が胸って……」 レオナ「あぁ、その点なら御心配なく。これは石岡さんのことを何度も見たことがある 方の証言だし、勿論私にも異存はないわ。ねえ――御手洗さん?」 御手洗「……あ? あぁ、まあ……間違ってはいないと思うよ……」 レオナ「じゃ、これはそのまま残しておいて貰うということで。――それでは私はそろ そろお暇(いとま)させていただくわ。美味しいお茶御馳走様でした、石岡さん。 御手洗さんも、またどこかでお逢いしましょうね。バイ!」 石岡 「あっ、レオナさん!? ――…ああ、帰っちゃった……一体何しに来たのかな」 御手洗「全くね。――さ、それじゃあ気を取り直して今度はそんなレオナの紹介文だ。 ああ、こいつは僕が書こうかな? 石岡先生に女性描写を任せると辞書一冊分 ぐらいの超大作になっちまうかも知れないからね」 石岡 「もう、そんなに書いてないってば!」 |
---|
|
---|
石岡 「…………」 御手洗「…………」 石岡 「…………? ……あっ! これってもしかして……!」 御手洗「ああ、やっぱり気が付いた?」 石岡 「もう、つくづく意地の悪い男だな君は! この容姿に関する項目、僕が書いた ≪暗闇坂の人喰いの木≫から抜粋しただろう!?」 御手洗「正確には抜粋の抜粋だけどね。本当はこれの七倍程だらだらと無意味な描写が 為されていたが、あまりに必要性を感じなかった為こちらで適当にまとめ直し た。それにしても君って人は相変わらず……(嘆息)」 石岡 「なっ、何だよ? その可哀相な人を見るような目付きは! ――…あ、ところ で御手洗君、レオナさんの嫌いなものの項目にあるこの変な空間、何?」 御手洗「あぁ、それね……――別に。単なる入力ミスだよ。気にしないでくれたまえ」 石岡 「ふぅん、君でもそんなことがあるんだね……」 御手洗「――じゃあ、そういうことで。人物紹介はこの程度でいいんじゃないかな?」 石岡 「うん、本当はまだ重要人物がいるにはいるけど……ま、きりがないしね」 御手洗「ああ、それからこのページにある画像はあくまでもイメージだからくれぐれも 信用しないようにね」 石岡 「最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました。御納得された方は 下のボタンから次の行き先へ移動して下さいね」 御手洗「……石岡君、特徴に挙げようかどうしようか悩んだんだけど、君ってちょっと 二重人格なところがあるよね……」 |