ET CETERA 002-3 / TYPE-S

過去の幻影
かこのげんえい






 どうして突然あいつがあんなことを言い出したのか

 そもそも

 何がきっかけでそんな話題になってしまったのかも

 よく憶えてはいないけど


           
 いま
 僕が辛くて苦しい過去を未だ忘れることが出来ないのだと 本音を言ったら

 あいつ

 表現こそは穏やかだったけど

 あの時の恋は 彼女との思い出は

 全て寂しさが生んだ錯覚だったのだと まやかしだったのだと言い切った



 そんなはずないじゃないか

 あんなに激しく愛し合ったのに

 そんなはずは絶対にないと 僕は憤り彼をきつく睨み付け



 だから僕は言ってやったさ

 人を愛したことがない君なんかに

 僕の気持ちが理解出来るわけなんてないってね

 ――別に言い過ぎてやしないだろう?

 僕だって 傷付いたんだから





 
***・・・*・・





 きっかけはつまらないテレビのワイドショーだった

 大体

 何故興味のない芸能人の結婚や離婚の話題のせいで

 僕達二人が気まずい想いをしなければならないんだ?


        
 いま
 彼が哀しい過去を未だ忘れることが出来ないのだと あまりに寂しそうに呟くから

 僕はつい

 言ってしまった

 あの時の恋は 彼女との思い出は
 だんじょ
 男女の間で起こりがちな錯覚に過ぎないと 孤独が生んだ幻だったのだと



 そしたら彼は

 野生のライオンをも怯えさせることが出来るのではないかという程の目でこちらを睨み
                
 
はな
 この僕に向け とんでもない科白を放ったのだ



 ――誰が人を愛したことがないだって?

 笑わせてくれるよ 全く

 こんな痛みを哀しみを

 君の方こそ

 経験したこともないくせにね












深く、深〜く読み込んで下さい(苦笑)。



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