幕が上がった

 陳腐な悲恋物語

 俺はあの子に恋して振られ
         
 
 鋭く光る ナイフの刃

 殺人者と成り果てる



 そして ライトを浴び

 拍手の中 幕が下りる



 何度
――繰り返したろう



 “愛してるんだ”

 “お前だけを”

 “愛してるのに……”



 疲れたよ もう……
        
ドラマ
 幕が下りても 戯曲は終わらない

 疲れちまったんだ……



 幕が上がり

 俺の右手が血に染まる



 “愛してるから……”

 俺は刺した

 目の前の美しい貌は

 少しずつ 色を失い
――



 幕が下りた

 右手からナイフが落ちた

 俺はただ

 涙を 流し続けた